2013年3月1日金曜日

就職活動各論: 内定を取る「志望動機の書き方」

そろそろエントリシートの締め切りも近づいてきた頃でしょうか。
多くの後輩が「志望動機」を書くことで苦しみ始めていました。

自分は典型的な大手病患者だったので超大手企業の就職活動しかわかりません。ただ出したエントリシートは25社全て通過、全社2次面説まで進み、内定も10社頂きました。本記事では自分の経験を元に簡単にかける「大手企業の内定に繋がる志望動機の作り方・書き方」について書こうと思います。あくまでも志望動機に焦点をあてるので、それ以外のESの部分が平均的な水準にあることを前提にしています。

※記事末尾に「数十分で内定のとれる志望動機を書ける裏ワザ」として、記事全体をまとめるので時間がない人はそこだけ読んでみてください。


志望動機を書く前の心構えについて別の記事を書きました。
参考:就職活動各論:内定を取る「志望動機の心構え」





志望動機に関しては,神保町や三田の喫茶店で聞く学生同士のアドバイスも、就活本に記載されているノウハウも実用に耐えられないレベルでどれも酷いものです。はっきり言えば、そのアドバイスに従ってエントリシートが通ったとしても、面接で落とされて内定に繋がることはありません。そもそもサラリーマン面接官の心情を理解していません。



志望動機は「その企業を志望する理由」を反論のない形で出して、「相性ばっちりでやめないし、伸びるから自分を採れ」と期待値をあげながら訴えるだけでいいのです。サラリーマン面接官にも上司がいます。彼らが自分の責任を回避し、成果をあげられるようなフリをしてあげればいいだけなのです。(※面接システム論は後日の記事に回します)



大まかに既存の志望動機のノウハウは下記の2つに分けられます。

1.会社ドクトリン(資料や見聞をもとに「業界・会社・社風」について書く)
2.自分ドクトリン(自分で思ったままの「理由、仕事、思い」について書く)


どちらのドクトリンが正しいかという議論は間違っています。結論を先取りすれば、両方の内容を書くべきなのです。それぞれだめな理由を説明したいと思います。


1.失敗例:会社ドクトリン


多くの学生がする下記3つの間違いについて、どうやったら失敗するかを説明していきたいと思います。
1a.業界について書く
1b.会社の事業や社風について書く
1c.会社説明会で見聞きしたことを書く
7~8割の学生が1aだと言われています。少し頑張った人が1b。先輩のアドバイスに洗脳されて1cに僅かな人が辿り着きます。しかしどれも足りません。これらの間違いの結果、面接では下記のような悲しいことになります。



学生「業界がー」
面接「(競合他社じゃだめなの…?)」←本当に多いです

学生「事業や社風がー」
面接「(その事業以外だったら辞めるんじゃないか…?)」
面接「(社風ってなんだよ…)」

学生「説明会でー」
面接「(説明会なんてセールストークしかねぇよ…)」



本質的な問題は「会社ドクトリンについて書いても、他の学生と差別化できないこと」です。しかも内容がものすごく薄い。本当に心の中で昔から思っていたとしてもさっき考えた人との深さを面接官に論理的に伝えることは困難です。社風については具体的に共感した部分を述べれば、個人の受け取り方の違いで、まだ差別化できるのが救いですが。


事例を元にさらに説明しましょう。ネットで拾った花王のESを元に、何がいけないかを説明します。なお花王を選んだのは、「B to Cのビジネスで、強いブランドを持ち、CMも多く有名であるため、志望する学生が多く志望動機の差別化が必要不可欠なため」です。他意はありません。ええ、1次面接で左右の人が「化粧品が好きで、御社のアジエンスが好きだから志望しました☆ミ」なんて言ってるのを聞いて呆れてキレかけたからではありません。
私は『人々の役に立つ』仕事をしたいと考えております。■御社は化学メーカーであり、代表商品である洗剤やトイレタリー用品、化粧品、食品を製造しているということで、幅広いラインナップを持っており、消費者の方に様々な形で生活に役に立つ商品を提供出来ている会社であるということで志望いたしました。■また、御社の魅力として『ブランド力』が高いということです。ブランド力があるということはそれだけ企業としての社会的信用も高いということで、営業から研究まであらゆる分野で高い倫理意識が要請され、ひいては信用力の高い商品が生まれ、回りまわって消費者に役に立つことができると思いました。
要点ピックアップ→面接官の思考:
「人の役に立つ」→立たない仕事ってあるの?
「消費者に様々な商品を提供する」→だからなぜそういうのがいいの?
「社会的信用も高いから倫理意識が必要」→意味不明

誰が書いても同じESな上に、このESを書いた学生が志望する理由も論理性が皆無です。実際に就活を昨年までしていた身として理解できる部分もありますが、この類のESには説得力というものがまるでありません。人の役に立たない仕事なんてありませんし、様々な商品を提供する会社になぜ勤めたいかもわかりませんし、後半は意味不明です。何よりも「なぜあなたが志望するか」の視点が欠け落ちています。面接官があなたを選ばなければいけない理由(メリット)がありません。



2.失敗例:自分ドクトリン


多くの学生がする下記3つの間違いについて、どうやったら失敗するかを説明していきたいと思います。「ここで働いてみたい!」って憧れが先行するからでしょうか。特に自分ドクトリンは、B to Cを中心とした人気業種だとこの辺りの理由がよく散見されます。
1a.自分の感情的な理由について書く
1b.自分の仕事観について書く
1c.自分の思いについて書く
多くの学生が仕事観や仕事を通じて成長と書くことが多いですが、即、やめることをおすすめします。なぜなら、成長したいのは貴方の事情で、会社の事情ではないからです。これらの間違いの結果、面接では下記のような悲しいことになります。


学生「昔から夢で~」
面接「(うわぁ、また来た…。夢の事業いかなかったらやめるのかな)」

学生「私は仕事を通じて成長を~」
面接 「(貴方の仕事観を聞いても一銭にもなりません…)」

学生「私は笑顔が好きです」
面接 「(貴方の感情を知っても一銭にもなりません…)」


本質的な問題は「自分ドクトリンについて書いても、なぜこの会社でなければいけないのかを説明できないこと」です。言い換えれば、オナニー志望動機になりやすいのです。そんなの知らないよ、余所の会社行けよ、と思われたら挽回はできません。また自分のことを書くことに集中するとただの「企業のファン」になりかねません。企業が欲しているのは会社にメリットをもたらすビジネスパーソンです。


事例を元にさらに説明しましょう。ネットで拾った花王のESを元に、何がいけないかを説明します。なお、花王を選んだ理由は先ほどと同じです。

花王を志望する理由人に笑顔を与えている会社であるからです。貴社の製品には、使うだけで笑みがこぼれるという、魔法がかかっています。私も人に笑顔を与える仕事に憧れを持っており、そんな仕事がしたいと思っています。 Mr.Childrenさんの「彩り」という歌がありますが、わたしにとって仕事とはそういうものだと思っています。「僕のした単純作業が この世界を回り回って まだ出会ったこともない人の 笑い声を作ってゆく」という歌詞が私の仕事に対するやる気を生むのです。自分のする、なんてことない作業が誰かの幸せを作っていると思います。 なんらかの仕事をし「きっと誰かの笑顔を作っている」というプライドを持つ事で、自分を成長させると考えているので、私は貴社を志望し、たくさんの人の笑顔を作る製品を提供していきたいと考えているのです。
要点ピックアップ→面接官の思考
・「笑顔を与えている会社・製品」
→「(人に笑顔…?製品のどんな所が…?トイレタリー商品だぞ…?」
・「Mr.Children的な仕事観」→「(何を言ってるのかわからない)」
・「笑顔をが自分の成長」
→「(なぜ会社が貴方の成長を助けてあげないといけないのか)」
・「たくさんの人の笑顔を作る製品を提供していきたい」
→「(具体的に何かもわからないしメリットが皆無…)」

今回は誰が書いても同じESではありません。独創性のあるESに仕上がっています。ただ、考えてみてみてください。企業にとって 、この人を雇うメリットってあるのでしょうか。この類のESには説得力というものがまるでありません。自分の世界に浸り切り、読み手のことを意識していません。相手は何千の中から人を選んでいるのです。志望動機として自分のことを打ち明ける場だとしても、「企業にとって、あなたを採用しなければいけない理由」を書かなければいけないのです。面接官があなたを選ばなければいけない理由(メリット)がありません。



解決策:志望動機として伝えなければならないこと


これらのような間違いを避けるにはどうしたらいいのでしょうか。
解決策は「会社に貢献できること」を論理的に訴えることです。「ロジカル面接術」という本はこの点に踏み込んで下記のようにまとめています。

志望動機とは、「会社に貢献できること=能力×相性」。

ただこの本も、志望動機を「会社に貢献できること=能力×相性」とまで述べている点はいいのですが、著者が外資系出身ということもあり、日系の新卒採用の実情にはやや足りていないように思います。日系企業の新卒採用では、雇って育てるという社内教育が強いため、相手にとっての期待値(伸び白)をあげるといいでしょう。


■志望動機を簡単に書く方法
 1. 「その」業界を志望する理由
 2. 「その」企業に惹かれた理由
・ その企業自体のどこに惹かれたか(ハード面:事業や製品思想など)
・ その企業の中のどこに惹かれたか(ソフト面:社風や人の思いなど)
 3.自分の強みが生かせる理由 
・ 自分の心にその企業がなぜ響いているか(感情的情熱面)
・ 経験をもとに強みでいかに貢献できるか(論理的利益面)
4. 自分の情熱と本気おまけ
・ 入社後を想起させる抱負 
・ 単独第一希望であること

これの志望動機をもとに、花王のES例を書いてみたいと思います。
生活に密着し支えるトイレタリー業界に興味をもった。中でも貴社の、1)ヘルシアなどの新商品開発やアジア市場に積極挑戦する会社の姿、2)辛くても試行錯誤を楽しむ社員の働き方、に共感した。とりわけ社訓や創業者の言葉が、現状に甘んじず常に成長を目指し努力してきた自分の心に響き、ぜひここで世界を相手に尽力したいと考えた。自分は8歳からサッカーをし、優勝という目標のもと、競合校の試合を実際に見て情報を集め、勝つ手段を分析することを楽しんできた。そこで貴社の流通開発の社員として、自分の「足で情報を集め、試行錯誤する」強みを活かして貢献していきたい。単独第一希望として志望します。入社の折は努力を惜しみません。
要点としては、こういうことを考えてもらおうと意図しています。
・業界を絞っており、この業界への志望度が高そう→面接時の他社選考状況で、志望度が薄いと取られて弾かれない
・この会社である理由が明確→製品面でも○、会社 のマクロ視点、社員のミクロ視点でも○
・自分の話があり、オリジナルES→この人がなぜ志望しているかが明確。相性が良さそう。
・強みを活かして貢献する→たしかに入れておけば利益に繋がるかもしれない。面接で詳細チェック。
・単独第一希望→ここまで書くなら他社に流れないな…

これまでの間違いESと比較してみてください。「業界の中でもその会社を選んだ理由」を明確にし、「自分の経験や強みを交えながら貢献できる」ことを示している分、採用した場合の貢献が想像しやすいのではないでしょうか。そして似たようなESで私は実際に内定を貰いました。※このESもまだまだ改善の余地はありますが…


また最終面接を多く経験するとわかるのですが、前半で気にする「ES通過」はあたりまえで、後半では「内定を出しても断られないなと思わせること」が勝負の肝になります。志望度が低いとみなされれば、どんなに優れた人間でも落とされるのがサラリーマン面接官が運営する日本の就活システムです。そのため、「業界を絞っていることを明記」「単独第一希望を明記」という部分も差別化要因になるのです。


さいごに、会社の負の部分に敢えて触れるのも効果があります。たとえばきつい仕事が多い企業の志望動機なら「辛い仕事に立ち向かい達成感を求める社員の姿に惹かれた。自分も今まで~」など。会社は負の部分を隠してPRしているため、ちゃんと調べた熱心さときつくてもなお志望する熱心さで非常にウケがよくなります。向こうも3年以内に辞められたら困るため、実情を知ってなお志望する人を評価しているのです。


まとめ+裏ワザ

■志望動機を簡単に書く方法
 1. 「その」業界を志望する理由
 2. 「その」企業に惹かれた理由
・ その企業自体のどこに惹かれたか(ハード面:事業や製品思想など)
・ その企業の中のどこに惹かれたか(ソフト面:社風や人の思いなど)
 3.自分の強みが生かせる理由 
・ 自分の心にその企業がなぜ響いているか(感情的情熱面)
・ 経験をもとに強みでいかに貢献できるか(論理的利益面)
4. 自分の情熱と本気おまけ
・ 入社後を想起させる抱負 
・ 単独第一希望であること

■裏ワザ
○1、2(ハード面)は、「みんなの就活日記の先輩内定者の志望動機を読み、一番多い考え方を要約」すれば一瞬でできます。こんな所は差別化の対象ではありません。差別化は3の自分の話で十分です。(※みんなの就活日記: http://www.nikki.ne.jp/ )

○2(ソフト面)は、OB訪問がベストですが、時間がない時は「転職口コミサイトのコメントから流用」することもできます。口コミサイトは負の感情が渦巻いているので敢えて負に触れる際に便利です(※転職会議:http://jobtalk.jp/ ※キャリコネ: http://careerconnection.jp/

○4は定型文で。「単独第一希望として志望します。入社の折は努力を惜しみません。」

何か意見があればコメント頂けると嬉しいです。

※本記事は、あくまで、自分の就職活動の知見をもとにしたものであり、実際に内定を保証するものではありません。ただ自分はこのインスタント志望動機でだいぶ楽に志望動機を作れていたので、その技を文章化しておこうと考えた次第です。

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